雨の中、廃墟で倒れている及川真一を見つけた山崎紗月の決断力が素晴らしい。敵に追われる危険な状況でも彼を守り抜く姿は、単なるアシスタントコーチを超えた愛情を感じさせる。倉庫での二人きりの時間は緊迫感と切なさが交錯し、ネットショートアプリで一気に見てしまった。記憶を失った彼を優しく受け入れる彼女の強さが物語の核になっている。
暗いトーンから一転、三年後の山崎ビリヤードクラブでの及川真一の無邪気な笑顔が眩しすぎる。オーバーオールを着てパンダのバッグを持つ姿は、かつての覆面王者の面影はないが、幸せそうで安心した。山崎紗月との夫婦としての掛け合いも微笑ましく、夫を拾ったらビリヤードの神様でしたという物語がハッピーエンドを迎えた瞬間だった。
及川真一が放つビリヤードのショットに龍のエフェクトが乗る演出が派手で面白い。記憶を失っても身体が覚えているのか、三年後に挑んだ難易度の高い配置を見事に成功させるシーンは鳥肌が立った。挑戦失敗の回数が表示されるデジタルボードもリアリティがあり、最後の一発で成功した時のカタルシスは格別。視覚効果とスポーツの融合が見事。
及川真一が襲撃され、雨の中を逃げるシーンの映像美が映画並み。暗闇と雨音、そして追ってくる敵の足音が恐怖を煽る。山崎紗月が彼を隠す時の必死な表情や、敵が窓を覗く瞬間のサスペンスは息を呑むほど。夫を拾ったらビリヤードの神様でしたというタイトルからは想像できないほどのスリルがあり、物語に深みを与えている。
王者から一転して記憶を失い、子供のように振る舞う及川真一の姿が切ない。山崎紗月が彼に教える時の優しさと、彼が彼女を信頼して甘える姿が胸に刺さる。過去の栄光と現在の無垢な姿のギャップが物語を牽引しており、ネットショートアプリの短劇ながら深い人間ドラマを描いている。二人の距離が縮まる過程が丁寧に描かれていて良い。